最近読んだ本 『日本の文脈』


内田樹中沢新一著/角川書店
同じ1950年生まれのお二人。同じ東大生でありながらつい数年前まで出会うことがなかったとのこと。
この本はここ三年に渡って行われた対談をまとめたもので最後は3.11以後。
コラム『荒ぶる神の鎮め方』は内田さんのブログでも読みました。少し引用すると、、、

「・・・政治家も、官僚も、もちろん電力会社の経営者も、原発を誘致した地方政治家も、地元の土建屋も、保証金をもらった人々も、みんな「あれはただの金儲けの道具なんだよ」と自分に言い聞かせることによって原子力に対する自分自身の中にある底知れぬ恐怖をごまかしたのである。
一神教文化圏の人々は荒ぶる神を巨大な神殿に祀り、それを「畏れ、隔離する」というかたちで「テクニカルなリスクヘッジ」を試みた。
日本の人々は荒ぶる神を金儲けの道具まで墜落させ、その所在を安っぽいベニヤの書き割りで囲って「あんなもん、怖くもなんともないよ」と言い張ることで「心のリスクヘッジ」を試みた。
福島原発のふざけた書き割りを見たヨーロッパやアメリカの原発関係者はかなり衝撃を受けたのではないかと思う。
その施設の老朽ぶりや、コストの安さや、安全設備の手抜きに心底驚愕したのではないかと思う。
どうして原子力のような危険なものを、こんなふうに「雑に」扱うのだろう・・・そこまでして「コストカット」したかったのか?日本人は命より金が大事なのか?
もちろんそうではない。話は逆なのだ。
あまりにも怖かったので「あれは金儲けの道具にすぎない」という嘘を採用したのである。」・・・なるほど、確かに原発のあの建屋はなんだか張りぼてみたいで心もとないというか、安っぽいと思ってました。。。。


内田さんはレヴィナス、中沢さんはレヴィ=ストロースと同じユダヤ系の思想家を研究していることもあり、ユダヤ教ユダヤ人、ユダヤ的思想についても日本との違いや共通点などを面白く説明。なぜノーベル賞の受賞者はユダヤ人が多いのか?や、ユダヤ教が人間にもたらしたもの、、「正解がない問に立ち向かうときの知性の使い方」答えられない問にまっすぐに向かうことで脳のパフォーマンスは爆発的に向上する。などなど。。

お二人の本はほとんど読んできましたが、これほど気が合うとは!終始ご機嫌で面白おかしく対談されているのが伝わってきました。